☉ 144王崴 - 倾斜
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中島みゆき - 傾斜
傾斜10度の坂道を
腰の曲がった老婆が
少しずつのぼってゆく
紫色の風呂敷包みは
また少しまた少し 重くなったようだ

彼女の自慢だった足は
うすい草履の上で 横すべり横すべり
のぼれども のぼれども
どこへも着きはしない
そんな気がしてくるようだ

冬から春へと坂を降り
夏から夜へと坂を降り
愛から冬へと人づたい
のぼりの傾斜は けわしくなるばかり

としをとるのはステキなことです
そうじゃないですか
忘れっぽいのはステキなことです
そうじゃないですか
悲しい記憶の数ばかり
飽和の量より増えたなら
忘れるよりほかないじゃありませんか

息が苦しいのは きっと彼女が
出がけにしめた帯がきつすぎたのだろう
息子が彼女に邪険にするのは
きっと彼女が女房に似ているからだろう
あの子にどれだけやさしくしたかと
思い出すほど あの子は他人でもない
みせつけがましいと言われて
抜きすぎた白髪の残りはあと少し

誰かの娘が坂を降り
誰かの女が坂を降り
愛から夜へと人づたい
のぼりの傾斜は けわしくなるばかり

としをとるのはステキなことです
そうじゃないですか
忘れっぽいのはステキなことです
そうじゃないですか
悲しい記憶の数ばかり
飽和の量より増えたなら
忘れるよりほかないじゃありませんか

冬から春へと坂を降り
夏から夜へと坂を降り
愛から冬へと人づたい
のぼりの傾斜は けわしくなるばかり

としをとるのはステキなことです
そうじゃないですか
忘れっぽいのはステキなことです
そうじゃないですか
悲しい記憶の数ばかり
飽和の量より増えたなら
忘れるよりほかないじゃありませんか